ない過払い金|第3 リンデロンAを中止した過失の有無 (原告らの主張) 1 リンデロンAの点眼によっ

過払い金を中止する前にでなく,前医ででの治療状況や症状経過について前医(F病院)のカル テ等によって確認をし,リンデロンA中止の必要性,他の炎症防止薬等を処方 45 せずにリンデロンAを中止した場合の重大なリスク(ぶどう膜炎の遷延・悪 化)等につき,医学的に検討し,その結果により前医においてステロイド緑内 障の判断検査を行っていなかった場合にはじめてリンデロンAを中止し,また 中止するとしても,眼内の状態のよい時期を選んでで中止すべき注意義務があっ たというべきでである。
以上
被告
医師


医師には,当時眼圧が高かった(従ってぶどう膜炎も 悪化している状態)原告Aに対して,安易にぶどう膜炎の炎症防止薬であるリ ンデロンAを突然他の代替炎症防止薬も処方せずに中止させたのであり,前記 注意義務を怠った過失がある。
4 被告らはリンデロンAを中止するのは標準的な治療方法であると主張する。
確かに,ステロイド緑内障か否かの判断をするためにリンデロンAを中止する 46 ことは一般的に行われている治療であるが,上記のとおり,被告らは,中止の 必要性及び時期の判断を誤っているのであるから,本件のリンデロンAの中止 を適切な治療行為ということはできない。
(被告らの主張) 1 リンデロンAを一気に中止することは,標準的な治療法の一つであり,原告 らの指摘するような危険性をはらむものではない。
そして,被告E医師はリン デロンAの中止の提案をするに際しては,あらかじめ眼圧検査を行い,「右3 5?Hg,左45?Hg」と極めて高い数値であることを確認したばかりでなく, 眼底検査を実施して視神経乳頭は正常であり,前房に炎症は認められないもの の両眼の角膜後面に沈着物があり,両眼隅角に虹彩前癒着を認めるなど,眼内 の状況を十分に把握した(乙A第1号証14頁)上でリンデロンAの中止を提 案しており,患者の眼の状況等についても十分把握した上でリンデロンAを中 止している。
2 なお,原告らは,「他に非ステロイド剤による炎症防止もしなかった」と主 張する。
しかし,上述したとおり,初診時に行った検査では前眼房に炎症細胞 は認められず,炎症は起こしていなかったのであるから,炎症の防止策を講じ るべきとする前提を欠いている。
3 以上のとおり,リンデロンAの点眼を中止することは何ら危険なことではな く,被告E医師は,事前に十分な検査も行っているのであるから,原告らの主 張は失当というべきである。
第4 ダイアモックスを過剰に投与した過失の有無 (原告らの主張) 1 ダイアモックスは眼圧降下薬として用いられる内服薬であるが,「尿路結石 の副作用」があることは,医学上明らかである(甲B第10号証) 2 ダイアモックスの投与方法について,甲B第9号証(乙B第6号証)「炭酸 脱水酵素阻害剤使用上の注意」では「投与対象は高齢者が多く,全身疾患を有 47 する頻度も高く,それら疾患への配慮を考えることも大切である」とされ,甲 B第10号証の製薬会社のダイアモックスの投与の際の注意事項では「高齢者 への投与は,低用量から投与を開始するとともに,患者の状態を観察しながら 慎重に投与することが必要である」とされており,ダイアモックスの投与は, 慎重になされることが要求されている。
実際に,F病院においては,下記のとおり,少量を短期間だけ,しかも期間 を置いて投与しており,副作用の防止に心を配りながら投与がされている。
平成14年4月23日250?錠剤を1日に1錠で2日分 4月30日250?錠剤を1日に2錠で2日分 5月1日250?錠剤を1日に2錠で2日分 8月30日250?錠剤を1日に1錠で7日分 9月24日250?錠剤を1日に1錠で7日分 3 これに対し,被告E医師が原告Aに対して処方したダイアモックスの量は2 50?の錠剤を1日に3錠服用(1日で合計750?の服用)で28日間分の 処方であった。
被告E医師は,原告Aと会ったのは平成14年11月15日の 初診と11月19日の2回目だけであり,前医のカルテも見ていないであるか ら,慎重にダイアモックスの処方をすべきであったのにもかかわらず,自らが 証拠として提出している乙B第6号証の書物の記載だけを見て,全ての患者に 対して1日1000?以下の投与であれば良しとして,具体的患者の状態も, 副作用も考えず,1日750mgものダイアモックスの処方を行ったのである。
この被告E医師の指示した処方量及び1日の服用量(750?)は,F病院で の処方・服用量(1日250?)とは明らかに異なっており,被告E医師がダ イアモックスを過剰に投与していたことは明らかである。


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また,原告Aは,被 告病院の初診時,前医であるF病院で処方された過去6か月分の薬のリスト (説明書)を持参して被告E医師に見せるとともに,同被告からダイアモック スも飲んでいるかと尋ねられ,何回か服用したが,ダイアモックスを服用する 48 と2〜3日後に排尿時に違和感があると答えているのであって,被告E医師は, 原告Aの場合,ダイアモックス1錠(250mg)を1日1回服用するだけで, 原告Aに排尿時の違和感が生じることを認識していたというべきである。
以上のとおり,被告E医師には,ダイアモックスの投与量につき,書物に よる一般的投与量の記載だけを盲信するのみで,医師として具体的な患者の状 態等を考えて万一の副作用を避けるために少量からの投与且つ連続せず期間を 置いての投与を指示すべき注意義務があったにもかかわらず,これを怠った過 失がある。
(被告らの主張) 1 ダイアモックスの添付文書によれば,ダイアモックス錠は1錠中にアセタゾ ラミド成分を250?含有しており,緑内障に対しては,アセタゾラミドとし て1日250〜1000?(したがって,ダイアモックス錠として1日1〜4 錠)を分割経口投与することとされている。
また,添付文書以外の文献においても,「ダイアモックス(炭酸脱水酵素阻 害剤)は緑内障の治療薬として使用されており,その病気の性質上10年以上 の長期にわたることも珍しくない。
ダイアモックスは1錠250mgであるが, 1日1g以上(4錠以上)は効果に比して副作用の程度が高まるので,長期に 使われることは稀である」(乙B第6号証405頁)とされており,臨床医か らも広く信頼を集めている「今日の治療薬」(乙B第7号証599頁)におい ても緑内障に対する1日量は250〜1000mgとされている。
2 よって,被告E医師は原告Aに対して平成14年11月19日にした,ダイ アモックス錠を1日3錠,朝,昼,夕の各食後に分けて服用するとの処方は, 添付文書に記載された処方量の範囲内に収まり,かつ,一般的な医学的知見に も合致するものであり,誤りはない。
3 原告らは,医師として具体的な患者の状態等を考えて万一の副作用を避ける ために少量からの投与かつ連続せず期間を置いての投与を指示すべき注意義務 49 があった旨主張するが,ダイアモックスの添付文書上も,その他一般的な文献 上も,ダイアモックスを投与するに際し少量から投与することや連続投与を避 けるべきことは指摘されておらず,また,臨床的にもそのような配慮が払われ る例はない。
なお,被告E医師が,原告Aから,その初診時に,ダイアモックスを服用す ると2〜3日後に排尿時に違和感があると聞いたことはなく,原告Aの場合, ダイアモックス1錠(250mg)を1日1回服用するだけで,原告Aに排尿 時の違和感が生じることを認識していたとの事実もない。
よって,原告らの当該主張には理由がない。
第5 過失と損害との因果関係 (原告らの主張) 1 過失と失明との因果関係 (1) 原告Aの失明の機序 原告Aは,平成14年11月19日,リンデロンAの中止により生じた過 去1度もない程の眼圧の上昇によって,あらゆる眼組織が急激に傷害されて 悪化し(角膜浮腫・ぶどう膜炎の悪化・網膜の傷害・視神経の傷害等の発生 ・悪化),その後も,眼圧が下がらず却って上昇したことで各種眼組織障害 は悪化し,さらに新たな眼組織障害も発症・悪化させるなどして,その結果, 視神経の障害・萎縮や毛様体の機能不全まで生じることとなった。
したがっ て,その後にD病院において眼圧を下げる手術を施してみても,視神経の萎 縮や毛様体機能の低下は戻らず,視力は喪失していった。
(2) 適時に緑内障手術を行わなかった過失と失明との因果関係 上記のとおり,原告Aの失明は高眼圧状態が続いたことが原因であるから, 被告らが,原告Aに発症した各眼内障害に対して早期に緑内障手術を施して いれば,眼圧を正常に下がり,各眼内障害も悪化せず,視神経や毛様体への 影響も免れ,失明を回避できたことは明らかである。
50 (3) リンデロンAの中止の危険性についての説明義務違反と失明との因果関係 原告Aが失明したのは,リンデロンAを突然中止したことにより生じた高 眼圧に根本的な原因がある。


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被告
被告E医師の認識では,原告Aが前医(F病院) にて2年前からリンデロンAの点眼を続けていたということになり,前医にて 2年間もリンデロンAの点眼を続けていれば必ずやステロイド緑内障を疑って その判断検査を行っていることは医師として当然に予測できることであり,こ の点からかも,前医のカルテ等によって確認すべき義務があったものといえる。 2 しかし,被告E医師は,前医のF病院のカルテを持参させ又は取り寄せて, 治療内容やステロイド緑内障の検査の有無等につき,確認することもなく,簡 単な問診だけでリンデロンAの中止を指示した。初診時の原告Aの眼圧が高い こと(右35mmHg,左45mmHg)を考えると,両眼のぶどう膜の炎症 も悪化していることが容易に判断でき,このような状況下で炎症防止薬のリン デロンAを急いで中止させるべき何の理由も存在しなかったが,被告E医師は, 単に,「眼圧が高い」「長期間リンデロンAを用いていた」「従ってステロイド 緑内障の疑いあり」「だからリンデロンAを中止させる」という安直な考えで, 前医での治療状況や原告Aの眼内の状態を深く考えず,リンデロンAの点眼中 止による視力低下の機序について全く意を用いず,突然思いついたままに安易 な発想のみでリンデロンAを中止させる行為に及んだのである。